ホーム > インターネットと名誉毀損(誹謗中傷) のアーカイブ
インターネットと名誉毀損(誹謗中傷) のアーカイブ
インターネット上の「犯人特定」サービスの法的問題点
- 2010-10-25 (月)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
頻繁に問い合わせいただくというわけでもないのですが、当社の誹謗中傷対策チームから相談される事項で、「犯人特定」(事実無根の内容により、権利侵害書き込みを行った者の住所等の個人情報の特定依頼)があります。
基本的に、当社では、犯人特定をサービス化しておりませんが、これらのサービスには、サービス提供者や依頼者(顧客、クライアント)が乗り越えなければならない法的問題があると考えています。これらの法的問題を乗り越えることなしに、権利侵害情報を書き込まれたので、その書き込んだ人物を特定してほしいという安易な依頼をすべきではないですし、その依頼をお金のために受けるということは言語道断であると思います。簡単に申し上げれば、もしもその書き込んだと思われる人物が、実際には書き込んでいなかった場合や書き込んだ内容がそもそも権利侵害(名誉毀損やプライバシー、著作権法違反など)を構成していなかった場合(誤った情報開示)には、特定され公表された人物に対する損害賠償や名誉を回復する措置等はどのようにするのでしょうか。この点、おそらく、「犯人特定のサービス提供者」は何も考えていないでしょう。そして、もしも何かが起こったら、依頼者の要望に従っただけなので、その責任の一切は依頼者にあるということで免責を主張するかもしれません。法も「情報開示をしなかったこと」よりも「誤った情報開示をしたこと」を重く考えているようです。
‐
では、犯人特定の法的問題点について私が考えていることをお伝えしましょう。結論は、安易に犯人特定サービスを利用すると危険であるということです。
1.民間の一業者が、簡単に個人を特定する情報(住所、氏名、IPアドレス、電子メールアドレス、書き込み時間など)を手に入れられること自体が問題。
これらの情報は、プロバイダーと呼ばれる電気通信事業者の下に保管されている情報ですが、その情報保管者ではない「犯人特定をサービス化」している者に対して、簡単に(語弊があるかもしれませんが、正式な裁判手続き、命令等がなく)教えているとしたら大問題でしょう。(ブログサービス提供者やサーバーサービス提供者など。一部、お金で情報提供しているなどという噂を聞きますが…悲しい)
堂々と、「犯人特定ができる」とインターネットという空間で商売にしている私たちのような業者が言ってしまえば、インターネット世界の発展を阻害することになり、完全に自己矛盾を起こしていることになります。いつ、誰が、どのような内容を書き込んだかということが、特定されるだけでなく、その情報を教えてほしいと言った人にいとも簡単に情報が渡ってしまうとしたら、インターネットを利用して情報交換など恐ろしくて一切できなくなってしまいます。そうすれば、インターネットは個人情報が垂れ流されてしまう危険性の高い空間であるので、利用を控えようという動きや、個人情報に対するさらに厳しい規定を制定・運用していこうという動きになり、非常に息苦しくなってしまうでしょう。たしかに技術的には個人特定ができるかもしれないが、それらは、本当に権利侵害をされて困っている人(つまり、法が予定している要件を満たす場合)を助けるときだけに限定的に利用されるべきだと私は考えています。
2.権利侵害と思われる書き込みの判断基準の曖昧さ。
権利侵害と思われる書き込みの判断は、非常に難しいところがあります。なんでもかんでも権利侵害だと決めつけるのは簡単なことですが、一つ一つの状況を確認すると、実は、権利侵害を構成していない場合もあります。権利侵害と思われる書き込みは、たとえば、名誉毀損やプライバシーの問題、著作権法違反などが考えられます。(よくご相談されるのは、だいたいこの3つです)
名誉毀損が多くを占めると思われますが、刑法230条の名誉毀損の違法性阻却事由を発信者が証明できた場合には、名誉毀損は免責されるのです。その違法性阻却事由とは、事実を摘示して名誉を棄損した場合、①それが公共の利害に関する事実に係り、②その目的が専ら公益を図ることにあり、③摘示した事実が真実であると証明されたときは、違法性が阻却され名誉毀損は成立しません。民事でも同様の要件で違法性が阻却されるでしょう。名誉毀損の違法性阻却3要件を立証するのは発信者(書き込んだ人)でありますので、プロバイダーではないことも注意が必要です。もちろん、民間の一業者にもありません。
3.法は、「誤った不開示よりも誤った情報開示」のほうを重く考えている。(プロバイダ責任制限法の発信者情報開示請求権)
プロバイダーは被害者との関係もありますが、もちろん契約や規約でそのサービスを利用している発信者(書き込み者、権利侵害と思われる人)との関係もありますので、一方的に被害者保護だけを考えるわけにはいきません。本当に被害者かどうかなど事例を見てみないとわかりませんから。
プロバイダ責任制限法は、被害者から発信者情報の開示を請求された場合には、一応、発信者にの意見を聞くことが求められています。(4条2項) 発信者が開示に同意しなかった場合には、基本的にはプロバイダーは情報を開示する必要はないでしょう。発信者の不同意及び権利侵害かどうかの判断はプロバイダーにはできない等の理由から裁判所の正式な開示命令を待つことになった(ある意味、放置した)としても責任を問われることは小さいと思われます。
よって、誤った不開示(①名誉毀損の成立していることが明らかな時、②発信者情報の開示が発信者に損害賠償を請求するために必要である等開示を求めることに正当な理由がある時、左記①②を充足していないと考えて被害者に対して開示しなかったこと)よりも誤った開示のほうを重くしています。誤った開示の場合には、同法とは関係なく、民法の不法行為法で処理されることになると考えられます。(プロバイダと発信者の関係で。もちろんその間に、犯人特定サービス提供者や依頼者がいればそれらも同様に責任追及の対象となる可能性があります)だから、簡単には情報を開示してはいけないと法も予定しています。ということは、この点の理解を薄くして、法は開示するよう義務付けているというような一側面だけを強調した営業トークなどは非常に危険ですのでご注意ください。
―
以上のことから、「犯人特定」サービスを提供及び依頼するのはかなりのリスクを負うことになります。もちろん憲法で職業選択の自由などが保障されていますから、基本的にはどのようなサービスを展開しても問題はないかと思いますが、この程度のレベルを考慮することなし(考慮しているのならば、依頼者に対して重要事項の説明をしたり、時には諌めることも必要でしょう)にサービスを提供しているとなると、なんだか世も末だなという気持ちになります。もしも本当に犯人特定をしたいということでしたら、粛々と法に基づいて対応されたほうがよろしいかと思います。インターネットによる犯人特定を遂行した場合にはおそらく依頼者がすべての責任をとらないといけませんから。私は、単純なお金儲けではなく、しっかりと倫理観を持った上で事業を展開していきたいと思います。それが、当社のビジョンである「世界で最も尊敬される企業になる」ということだと一同考えております。
プロバイダーのサービス規約
- 2010-10-22 (金)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
前回は、「ニフティ事件」を取り上げ、裁判によってプロバイダーの責任が認められた事例があるということをお話ししました。
そこで、今回は、その判決から、プロバイダーはどのようなサービス規約を設定して、利用者に権利侵害発言をさせないような工夫をすればよいでしょうか。
―
簡単に申し上げれば
「公序良俗に反する表現や他人の権利を侵害するおそれのある表現をしないこと」
「そのような表現を発見したら、場合によってはプロバイダーが書き込みを削除すること」
を規定しておくとよいでしょう。
また、利用者すべてがこの規約に同意していることが重要ですので、どこかで一度読んでもらう機会(規約閲覧機会)の提供が必要です。
―
このような規定をしたからと言って、プロバイダー側で勝手に削除していいのか(憲法の表現の自由から)という意見もあるようですが、基本的には、プロバイダー側が規約に則って対応すれば問題ないかと思います。
表現の自由に関しては、憲法の規定(憲法は、国家と国民の契約だと習ったような気がします。憲法は国や地方公共団体に対する規則です)ですので、プロバイダーという私人に対して直接適用するのは望ましくありません。やはり一つの企業体として、書き込みを行うもの(利用者)とプロバイダーとの間の利用規約を大事にしたいところです。
したがって、当然、プロバイダーはサービス規約にあることは守らなければなりません。
規約違反の権利侵害的表現行為が発見された場合には、規約にあるような適切な措置を講じなけらば表現行為によって生じた不法行為については、プロバイダーも責任を取らなければならないことになるでしょう。
言ったことは守る。基本中の基本ですね。
プロバイダーの責任~ニフティ事件~
- 2010-10-20 (水)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
頻繁に問い合わせいただくというわけでもないのですが、当社の誹謗中傷対策チームから相談される事項で、「犯人特定」(事実無根の内容により、権利侵害書き込みを行った者の住所等の個人情報の特定依頼)があります。
基本的に、当社では、犯人特定をサービス化しておりませんが、犯人特定に最も効果的であると考えられている法律が、「プロバイダ責任制限法」です。この法律については、本ブログでも何度も触れていますが、掘り下げていくことが重要だと思いますので、これからも様々な角度からこの法律に触れていきます。
‐
本日は、プロバイダーの責任を認めた有名な判例をご紹介いたしましょう。
タイトルの通り、「ニフティ事件」と呼ばれているものです。
この判例は、プロバイダーやシステムオペレーター(シスオペというらしいですが)に対して、法的責任を認めました。
ニフティという会社は、インターネットのサービスプロバイダーを主力事業としており、電気通信事業者です。(最近、あんまり話を聞きませんが、有名な会社なので会社概要などは省略)
ニフティは、会員が意見交換をするフォーラム(日本語で言うと「電子会議室」とでもいうのでしょうか。私自身は、あまり使わないので馴染みがないのですが…)を設置・運営・管理していました。このフォーラムで名誉毀損発言、権利侵害発言(とある男性が、とある女性に対し「胎児殺し」「嬰児殺し」などという書き込みを執拗に行ったそうです。原因や背景ははっきりとはわかりませんが…男性会員も男性会員、女性会員も女性会員(男性会員の住所などを調べて特定したそうです。)とお互いエスカレート。詳細割愛)が掲載され、損害賠償請求訴訟が提起されました。被害者(女性会員)は、発言者(男性会員)のみならず、プロバイダーであるニフティやニフティから管理を依頼されていたシスオペに対しても、その法的責任を問うために損害賠償請求(民事)をしました。
第一審判決(東京地判1997年5月26日。wikipediaには27日と書かれていますが、私の調査では26日です)は、掲載された発言が名誉毀損にあたるとした上で、シスオペに対しては、「少なくともシスオペにおいて、その運営・管理するフォーラムに、他人の名誉を毀損する発言が書き込まれていることを具体的に知ったと認められる場合には、当該シスオペには、その地位と権限に照らし、右の者の名誉が不当に害されることがないよう必要な措置をとるべき条理上の作為義務がある」とし、他人の名誉を毀損する発言が書きこまれたことを知りながら必要な措置をとらなかった作為義務違反があるとして、不作為による不法行為の成立を認めました。ニフティに対しては、シスオペとの間に実質的な指揮監督関係があるとし、使用者責任を認めました。
つまり、
シスオペは、作為義務違反。
ニフティは、使用者責任。
よって、被告3者(発言者、シスオペ、ニフティ)に賠償を命じた。
ということで、名誉毀損表現を削除しないまま放置するプロバイダー等に対して法的責任を追及することが可能になります。
続きがありまして、控訴審判決(東京高判2001年9月24日)は、どうだったかというと、シスオペとニフティの両者の責任を否定し、一審判決とは逆の結論が出たそうです。但し、発言者は名誉毀損が確定。男性も反訴したそうですが、反訴請求は棄却)
―
このような形で、プロバイダーの責任が肯定される判決もありますので、プロバイダーやサイト運営者は、利用者の発言等に対してもある程度のリスクヘッジをしなければなりません。プロバイダーにとっては、利用者の発言の一つひとつを監視しなければならないのかと思うと正直うんざりしますね。
この判決が出たのは、およそ10年前。ここ数年で、フォーラムと言われていたものは、mixiなどでいえばトピックと言ったりするのでしょうか。ブログやツイッター等、私たちのような一般人が情報を発信する場所がインターネットの世界に数限りなくあることがほぼすべての人に認識されています。よって、なかなかプロバイダーにはつらいところですね…
さて、次回は、「プロバイダーのサービス規約」という話で、ニフティ事件のようにプロバイダーが責任追及されないようにするにはどうしたらいいかを考えてみたいと思います。
ネット実名制~法的なシステムから捉える~
- 2010-10-06 (水)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
さて、前回は、中央大学法学部で著作権法を学んでいたころの師である小倉秀夫弁護士が、主張された「ネット実名制」を情報発信者の倫理的側面から考えてみました。
簡単におさらいすると、
①情報発信者は、自分の発言に責任を持ちましょう。(私見)
②情報発信者は、権利侵害行為があったとしても、安易にインターネット上の誹謗中傷を書き込むという手段に訴えることなく、ADRや仲裁、訴訟という公的機関を利用した解決法を模索しましょう。(私見)
②については、別の機会で法学教育の充実と絡めながらもう少し詳しく書けたらいいなと考えています。
では、今回の本題であるネット実名制を法的なシステムから捉える前に、小倉先生のいうネット実名制をおさらいしたいと思います。
前回の記事からコピペ。
引用元:弁護士の小倉秀夫氏に聞く ネットでの誹謗中傷問題(中)実名を使うのが基本 それがネットをよくしていく(2008年1月20日)
ネット実名制とは、
①法的なシステム+②情報発信者の倫理という2つのフェーズに基づき、インターネット上の発言に関し、プロバイダーか、発信者か、誰かが責任を取るべきだという考え方だと言えます。
①法的なシステムについては、まず、不特定多数の人たちに責任の所在が明示できるように、現実社会の名前、つまり実名を使うのを基本とするような制 度にする。たとえペンネームなどを使う場合でも、発言の被害者から氏名、住所の開示の請求があれば、いつでも開示できることが望ましい。もし、匿名を使う ならば、プロバイダーやブログ事業者がその責任を負うようにしなければなりません。情報を発信する以上、そこに社会的人格が結びつく必要があり、プロバイ ダーか、発言者か、誰かが必ず責任を負うべきだということです。
→実名の使用を基本とし、匿名の使用を許可した場合には、プロバイダーやブログ事業者などの発言の場を提供した人が責任を負う。
②情報発信者の倫理については、情報発信する人の責任として、積極的に実名を明らかにしましょうということです。ハンドル名だけでは足りません。こうした倫理は呼びかけていくしかないのです。
→情報発信者に実名を公表するように呼び掛けていく。世論形成ともいえるでしょうか。
―
さて、小倉先生は、上記のようにおっしゃっていますが、「誹謗中傷発言の責任の所在を明確にせよ」という目的達成の手段としての法的なシステム構築を提案されています。
私自身が、数回前の記事で、誹謗中傷を法的に解決する場合のポイントは、「犯人の特定である」と述べました。法的な解決法を望む場合には、何といっても、書きこんだ人を見つけるという作業が必要です。(※裁判をするにしろ、「原告」と「被告」という当事者を明示しなければなりませんので)
現在、犯人を特定するために有効だと言われている法的システムは、「プロバイダ責任制限法」という法律です。この法律についても、私のエントリで触れましたが、限界があります。当事者の要請からはなかなか応じてもらえないことです。1度か2度の裁判で、裁判所の開示命令というお墨付きをもらう必要があるというのは前記致しました。インターネット上の誹謗中傷対策を行っている業者の中には、犯人特定というプランでサービスを提供されているところもありますが、このプロバイダ責任制限法の情報開示義務という制度を利用し、弁護士名義で情報開示を請求したり、特殊な調査方法でIPアドレスなどから書込主を特定するのでしょう。これらは、方法論としては確立されておりますが、なかなか猥雑な作業が多く、誹謗中傷を書き込まれて実際に被害に遭われている方からすると費用に対して効果の高さが実感できないかもしれません。
よって、ネット実名制ということになるのでしょう。
「共通ID」の発行などを提案されているようですが、正直なところ、実現可能性は難しいでしょう。
IT業界で働く私は、日々様々なお客様とお話をさせていただいております。様々なお客様と言っても、主には、「インターネットを利用して売り上げを伸ばしたい」という考えのある方々です。(インターネットを利用して売り上げを伸ばすためには、サイト制作、システム開発、検索エンジンを利用したマーケティング、ソーシャルメディアを利用したマーケティング、保守管理などなどお客様の持つ悩みというのは枚挙にいとまがありません。よって、簡単にいえば、「人件費部分」の最適化と「広告費部分」の最適化のお手伝いということになります。○○というサービスを利用するとヒトの作業時間がこのくらい減るので人件費がカットできたり他の仕事ができたりしますというのが「人件費部分」の最適化となります)
とはいえ、インターネット業界というのは、差別化戦略は簡単なようで難しい部分があります。我々のように大学生時代からビジネスに参画できるというのもビジネス参入障壁の低さにあります。ある程度の模倣も許されてしまう業界です。その中で、自分たちの差別化をしていかなければなりません。
インターネット業界(ウェブ進化論)で有名な梅田望夫さんが、『ウェブ時代をゆく』という本の中で、インターネットサービスを次の3点で捉えようとしました。
①オープン
②パブリック
③フリー
(※順番が間違っているかもしれませんが、ネット実名制の議論においては、①オープンと②パブリックの順で重要だと思いますので、このような順番にしています)
ネット実名制でも、これらの考え方を利用することができるでしょう。
つまり、小倉先生の言うところの「共通ID」を実現するためには、プラットホームのオープン化とパブリックがカギになります。
私はシステム開発の専門家ではないので、詳細まで語りつくすことはできませんが、IDやPASSというのは、サービスサイト毎に決められているのが基本です。これらを共通にするためにはシステムの仕様を含めてオープンにしなければならないでしょう。共通IDを利用している例としては、ヤフージャパンのIDとamazonのIDが同じものだったりしますね。
正直、便利です。ヤフーやアマゾンといった巨大サイトの利用者にとっては。。。しかし、我々のような小資本がインターネット上に参画する可能性を摘みかねないのがこの共通IDの発想です。新しくメディアビジネスを始めたくても共通IDを発行している協会など(共通IDの発行主は誰だかわかりませんが、パブリックなところが発行することになるでしょう)に申請をして、その申請が受理されたら発行されるということになれば、小資本がアイデアをベースにビジネスを始めようとした矢先に情報が漏れ、大資本が先に同様のビジネスを始めてしまうということにもなりかねず、インターネット上のビジネスに暗雲がたちこみかねません。
これはほんの一例にすぎませんが、共通IDの発想以外にも議論を尽くしていきたいところですね。(大変難しい問題だと思います。こんな方法がいいと提案するのも難しいです。全国民に番号を割り振るなどという発想は住民記帳台帳でありましたが、ネットの参入障壁の面から捉えるとかなり大げさなような気がします。)私は、ネット実名制には基本的に賛成の立場ですので。そして、事実無根の誹謗中傷に対し、誰かが責任を取ることは必要です。実名公表を基本とし、匿名の場合は情報開示の場を提供した主の責任ということで問題はないかと思いますので、実名公表の方法が重要になってきます。
―
回答保留…法的システムを安易に提言できません。すみません。もっと考えます。
ただし、倫理面からこちらは一つの回答にさせていただきたいと思います。
①情報発信者は、自分の発言に責任を持ちましょう。(私見)
②情報発信者は、権利侵害行為があったとしても、安易にインターネット上の誹謗中傷を書き込むという手段に訴えることなく、ADRや仲裁、訴訟という公的機関を利用した解決法を模索しましょう。(私見)
-
2010年10月8日追記
ネット実名制は、韓国で2007年に導入されています。
韓国の芸能人がインターネット上の誹謗中傷を苦にして自殺したとか、そういう話を聞きますので、日本の国内法以外にも韓国などの研究をしてみると最先端の考え方などに触れられるかもしれないなと思った本日でした。
ネット実名制~情報発信者の倫理面から捉える~
- 2010-10-04 (月)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
私は、大学時代3年次と4年次のころ、「著作権法ゼミ」(指導教官:小倉秀夫弁護士)に所属し、そのゼミにゼミ長を務めていました。
インターネット上での誹謗中傷対策を突き詰めていく上で、古くからこの問題に取り組まれていたのが小倉先生でした。ゼミの主題は、著作権法のため、インターネット上の誹謗中傷問題を詳細に取り扱うということはありませんでしたが、今一度、先生の考える「ネット実名制」をご紹介すると共に、その論を私なりに考えてみたいと思います。
―
引用元:弁護士の小倉秀夫氏に聞く ネットでの誹謗中傷問題(中)実名を使うのが基本 それがネットをよくしていく(2008年1月20日)
ネット実名制とは、
①法的なシステム+②情報発信者の倫理という2つのフェーズに基づき、インターネット上の発言に関し、プロバイダーか、発信者か、誰かが責任を取るべきだという考え方だと言えます。
①法的なシステムについては、まず、不特定多数の人たちに責任の所在が明示できるように、現実社会の名前、つまり実名を使うのを基本とするような制度にする。たとえペンネームなどを使う場合でも、発言の被害者から氏名、住所の開示の請求があれば、いつでも開示できることが望ましい。もし、匿名を使うならば、プロバイダーやブログ事業者がその責任を負うようにしなければなりません。情報を発信する以上、そこに社会的人格が結びつく必要があり、プロバイダーか、発言者か、誰かが必ず責任を負うべきだということです。
→実名の使用を基本とし、匿名の使用を許可した場合には、プロバイダーやブログ事業者などの発言の場を提供した人が責任を負う。
②情報発信者の倫理については、情報発信する人の責任として、積極的に実名を明らかにしましょうということです。ハンドル名だけでは足りません。こうした倫理は呼びかけていくしかないのです。
→情報発信者に実名を公表するように呼び掛けていく。世論形成ともいえるでしょうか。
―
さて、小倉先生の仰る「ネット実名制」とは、上記のようなお話なのですが、現在の私は、このネット実名制という説をすんなりと理解できます。しかも、肯定的に受け取っています。
なぜ、「現在の私」と言ったかというと、学生時代の私だったら肯定的に受け取ることができたかどうかと考え込んでしまったからです。
例えば、mixiというメディアがあります。いわゆるSNSの雄であり、私がmixiに初めて触れたのは、2005年11月頃に友人からの紹介でした。そのころは、大学1年生でした。大学生仲間で流行り始めたインターネットサービスとうことで衝撃を受けた印象があります。SNSという言葉も有名になりつつあり、同時にGREEというサービスも利用していたのを覚えています。(GREEは、今や携帯電話ゲームのGREEという印象が強いですが、SNSといったらGREEかmixiかと二大巨頭的にとらえられていた時代でした)
さて、私がmixiを始めたころは、小倉先生のいう通り、「実名」を公表している人が多かったと思います。なぜなら、まだ流行り始めたばかりのサービスですので、しかもネットワークしていかなければ、面白さが半減してしまうので、リアル世界の誰だれさんと繋がるためには、自分が誰かを明らかにしなければなりませんでした。そのような目的から、実名公表が抵抗なく行われていました。
しかし、ある程度の期間が経過すると、実名公表を避けるような動きが始まりました。やめてしまう人も何人かいました。私の友人の例を挙げますと、権利意識の強い人が多かったです。ちなみに、特徴としては、面白いことに公法系(憲法や刑法)を専攻している人に顕著に表れていました。
理由は、さまざまだと思いますが、個人情報を利用した悪質な業者であったり、mixi疲れという言葉ができるようなネットワーキング上のつながり、出会い系サイトに類似した利用方法などで、実名公表を避ける動きが始まりました。最近は、むしろ実名公表を避け、個人を特定する検索機能からも除外しているユーザーのほうが多いのではないでしょうか。
私自身は、現在に至るまで、mixi、ツイッター等のソーシャルメディアにおいて、実名公表をしています。
ヴォラーレ株式会社が誕生して4年が経過しようとしている現在、ある意味、私や会社というのは、公共物であると思っています。(政治家やタレントなどに比べたら公共性は薄いかもしれませんが…)社会に何らかの価値を提供し、多かれ少なかれ影響を与える可能性のあるという点では、やはり公共物なのでしょう。よって、実名公表をし、責任ある発言をしていこうと心がけています。
ただ、ネット実名制の反対概念である「ネット匿名性」についても一定の理解を示さなければなりません。実名を公表するか公表しないかは個人の自由であるべきです。我々、インターネット事業者に課されるところとしては、インターネット上で、いつでもだれでもどのような発言をすることを可能にしつつ、事実無根の権利侵害発言については、厳格な対応を取っていかなければなりません。個人の倫理やインターネット事業者の倫理だけに任せるのは、どう考えても無理がありますので仕組化(いわゆる、法的システム)が必要でしょう。但し、発言の機会や表現の自由について、自己検閲の作用を強めすぎても、憲法21条のいうところの表現の自由に対する重大な委縮効果となってしまい、インターネットの強みである気軽さに逆行してしまうことは避けなければなりません。
非常に難しい問題ですが、このように私自身は自分のことをある意味公共物と捉えているため、ネット実名公表性を倫理面という側面から肯定的に捉えています。まずは、自己の発言に対し、責任を持てないようなことは断言したり、誤解を招くようなことをしないと心に留意して、これから始まるソーシャルメディア時代を生き抜いてほしいです。(気軽にインターネットを利用してください。私自身は、企業等から何か権利侵害があった場合には、インターネット上の誹謗中傷という手段に訴えることなく、ADRや仲裁、裁判などという公的機関を利用した話し合いで解決していくべきだと考えています。インターネット上の誹謗中傷は、権利侵害があったかなかったかという事実面をすっ飛ばして、あなた自身が名誉棄損等の犯罪者に認定されかねませんので。また、企業においても事実無根の書き込みがあった場合に、言論には言論をという対抗手段がインターネット上では取りにくく、書きこむ者、書きこまれる者の両者にとって不都合を産みます。負の連鎖は避けたいところです。これらも情報発信者の倫理に繋がる話でしょう)
小倉先生のいう2つのフェーズのうち、「発信者の倫理面」について捉えていると思いますので、次回は、1つ目の「法的なシステム」面に着目したいと思います。
インターネット上の表現行為と表現の自由
- 2010-10-01 (金)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷) | ウェブと法(その他)
今回は、趣向を変えて、「インターネット上の表現行為と表現の自由」と題して、インターネット上の表現行為と表現の自由を巡る諸問題を提起したいと考えています。
ここまでの数回は、インターネット上の表現行為の中でも1番身近で社会問題化している名誉毀損や誹謗中傷を法律的解決法やインターネットを利用した解決法のご提案をしてきましたが、この他にも、インターネット上の表現行為に纏わる問題は様々です。一度、考える機会ということで、羅列しておきたいと思います。
①違法な行為の扇動
→インターネット上で犯罪を呼びかけて実際に逮捕された事例があります。(闇サイト殺人事件など)
→殺人、レイプ、国家転覆など、インターネット上で書き込んだとして逮捕されたという事例を耳にしますね。ニュースなどで報道されると半分、笑い話になりますが、軽い気持ちで書き込んではいけないんだなと自分を戒めるきっかけになります。何も分からず書き込んでしまう人がいるという現実に恐ろしさすら感じます。
②虚偽の情報の公表
→名誉毀損。信用棄損罪・業務妨害罪。風説の流布による金融商品取引法違反。
→事実確認が取れていない情報を流す行為も犯罪に問われる場合があります。諸処の法益を侵害する可能性があるからです。
③選挙に関する表現
→現在、公職選挙法により、選挙による表現活動は厳しく制限されています。
→ネット選挙解禁などという話はたびたび耳にしますので、今後の動向には注目です。
→私見ですが、ネット選挙やインターネット上での政見放送には賛成です。政権交代や度重なる選挙などを見ていると、選挙には莫大なお金がかかるのがわかります。「いつでも」「どこでも」「だれにでも」というインターネットの利点を最大限に生かし、お金や基盤を持たない人々へ政治への機会を提供していきたいものです。もっと卑近な話をしてしまえば、投票日に近所の小学校に投票をしに出かけるのは正直めんどくさいです。セキュリティや本人確認などの諸問題を解決した後には是非ともネット投票などもしたいです。間接民主制から直接民主制への変革ができる可能性がインターネットにはあります。
④名誉毀損
→根拠条文は、刑法230条や民法709条の規定でしょう。(インターネット以外にも広く適用される一般条項といえます)
→憲法21条の表現の自由とバランスをとるために、刑法230条の2第1項もはずせません、名誉毀損が成立した場合でも一定の要件を満たせば、免責されるという規定です。
⑤プライバシーの侵害
→名誉毀損に比べて、規制を厳しくしても構わないと考えます。プライバシーに関して、インターネット上で公表されてしまうと、回復が困難、むしろ不可能に近いと思います。
→生年月日、顔写真、経歴等が考えられますが、自分から公表したものが二次、三次と伝播していくのは仕方がないと思います。上記しましたが、プライバシーにつながる情報は1度公表してしまうとある程度の電波は覚悟しなければなりません。ですが、ありがたいことにこのような個人が表現者となる時代においては、ブログやツイッターなどから新たな出会いがある場合もあり、大変重宝する一面もあります。
⑥侮辱・著しい精神的苦痛
⑦差別的表現
⑧わいせつな表現及び児童ポルノ
⑨青少年の保護
→有害図書に関して、話題になった時期もありました。
→「見たいもの、読みたいもの」に自由に触れられるのが、憲法が保障する表現の自由だと思いますが、青少年の育成上、よろしくないものに蓋をするという考えのようです。
→正直なところ、見たいものは見ますので、過剰な規制を行うべきではないと考えています。自分で選択して、自分で考えましょうと言いたいです。
⑩迷惑メール
→私見としては、メールマーケティングは認容されるべきだと考えています。毎日、毎日、同じ事業者から同じような広告メールが送られてくるような度を越した場合は、なんらかの規制をされるべきだと思いますが、週1回、月数回程度の広告メールは許容範囲でしょう。広告メールを許諾しない場合には、送信拒否を伝えたり、メールソフトのフィルタ機能を利用するなどで十分対応できるでしょう。それらの自助努力もせず、単に迷惑だからという理由から迷惑メール防止法を主張するのもお門違いな気がしています。経済活動はできるだけ自由であるべきですから。メールマーケティングもタイミングさえ合えば、受信者にとってもありがたい話だと思いますので、ダイレクトメールを過剰に規制するのはいかがなものかと考えています。
※上記分類については、「インターネットと法」(高橋和之ら編)の第1章を参考にしています。
最後に、インターネット上の表現行為に対しては、刑法や民法等その他規制や賠償を伴う法律は多岐にわたりますが、同時に、表現者(書き込みを行った者)の表現の自由(憲法21条)は、保障されなければなりません。
法律論のお話をしてしまえば、憲法上の人権をどこまで規制することができるか、大変難しい問題ですが、被害を受けたと感じて苦しんでいる方は現にいらっしゃるのです。そのような方々を、法的解決法以外の方法、特に、私たちができるのはインターネットにはインターネットという方法を利用した解決法で救えたら大変幸せなことだと思います。
インターネットにかかわる法の整備は進んでいるとはいえ、まだまだ不十分なところがあります。私は、法的視点にも立ちながら、法の整備を待たずして対応できることを模索していきたいと考えています。
誹謗中傷対策と法~自助努力による解決法の顛末~2ちゃんねる書き込み施策
- 2010-09-24 (金)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
さて、今回のエントリは、今までとは趣向の違うお話をしたいと思います。
前回までは、インターネット上の誹謗中傷の対策として「法的解決法」と「インターネットによる解決法」の2つの方向をご提案させていただいておりました。しかし、「法的解決法」も「インターネットによる解決法」もどちらも人や会社が介入しておりますので、どうしても費用がかかってしまいます。そんな費用を支払うのは嫌だから自分でなんとかしたいと思った方が自助努力による解決法を模索した結果、思ってもみなかった状況に陥ったときのお話をしたいと思います。
‐
以前、このようなご相談がありました。(結局、諸々の理由で受注にはいたりませんでした)
<ご相談内容>
※ちなみに、できる限り事実に基づいた話にしていますが、ご相談者と機密保持の関係から一部重要箇所はフィクションになっています。
①芸能プロダクションを経営している。(相談者)
②芸能プロダクションを解雇された人(犯人と思われる人物)が「2ちゃんねる」などの掲示板に書き込みを行っている。
③書き込みの内容は、全くのでたらめで困っている。(グーグルで会社名を検索するといたるところに誹謗中傷サイトがある)
④弁護士に頼もうと思ったが、費用がかかると言われたので嫌だ。
⑤何か別の手法はないのか。(希望としては、2ちゃんねるのスレッドを格納してほしい)
‐
上記が、簡単なご相談内容ですが、お話を進めていくうちに、血と汗の滲むような自助努力を行っていらっしゃったことがわかってきました。
どんな自助努力を行っていらっしゃったかというと、ご相談内容⑤の「2ちゃんねるのスレッド格納」だったのです。。。。。
「2ちゃんねるのスレッド格納」は、インターネット上の誹謗中傷対策の1つの手法として確立されているのですが、「効果のほどはいかに!?」と思うことが多々あります。このご相談者は芸能プロダクションの経営者ということで、もちろん、ウェブが本業である我々ほど明るいわけではありません。
ということで、この書き込みを削除(正確には削除はできていないのですが)しようと、「2ちゃんねる」への書き込みを削除するために、毎日、毎日、この相談者は一生懸命にスレッド格納のために書き込みを行っていたそうです。これだけでも相当の時間と労力を費やしていらっしゃったことが容易に想像できます。
しかし、この時間と労力は全く無駄だったのです。
「こちら(相談者)が書き込めば、あちら(書き込みを行っている人)が書き込みを行う」
「このスレッドをたまたま見た人も書き込みに参加してきた」
「一定数まで書き込みを行ったのでスレッドが格納できた」
「格納できたので安心したのもつかの間で、また新しいスレッドが立った」
「炎上に炎上を重ねた結果、今度は、無料ブログ(アメブロやライブドアブログなど)が毎日、数個づつ立ち上げられた」
「会社名の検索結果に2ちゃんねるのスレッドや無料ブログがひっかかってくる」
‐
あぁ、完全に炎上+堂々めぐりをしてしまっているじゃないですか…
書き込みを行った方は、この会社を解雇されてしまったことからニート状態により、書き込みをする時間は十分あったのでしょう。
というか、誹謗中傷サイトの数が半端ない数量でびっくりしました。
結局、今後も同様に書き込みを続けていくそうです…
‐
<今回の反省(2ちゃんねるスレッド格納型)>
①スレッド格納型は、書き込みを行っている者の神経を逆なでしてしまうので、新たな書き込みを誘発しやすい。
②単純に、スレッドを格納するために大量の書き込みを行う時間と労力がかかる。
③炎上騒動にまで発展してしまうと、全く関係のない人にまで会社の悪評を広げることになる。
④スレッドを格納したとしても、新たにスレッドが立てば、堂々めぐりとなる。
以上より、かえって被害が拡大する可能性が高い。
‐
というわけで、私は、スレッド格納などの自助努力はお勧めしません。自助努力を行うならば、「法的解決法」か「インターネットによる解決法」を模索して、委託できるところは委託してしまって、ご自身の本業に集中されたほうがいいと思います。また、今回のご相談については、書き込みを行っている人に対する不当解雇の類のお話もありそうなので、まずは、法令に大きく反することやご自身で反省できるところはないかと考えることも必要だと思います。「火のないところに煙はたたず」といいますし…
この事例はとほほでした…弁護士とかにお金を払いたくないと仰っていましたが、本当の理由は別のところにあったのかもしれないなと勘繰りたくなるお話でした。まぁ、このようなお話は、稀でしょうね。
-
追記2010年10月2日
数年前の記事で更新が完全に止まっているものに関しては、過去ログ収納も一つの手かもしれません。(炎上の可能性が低くなっているため)
システムを使って書き込みを格納することができますが、同じIPアドレスだ途中で規制がかかりますので注意が必要です。IPアドレスも分散させなければなりません。(弊社アカウント主任談)
誹謗中傷対策と法~法的解決法の方法論と限界③プロバイダ責任制限法~
- 2010-09-22 (水)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
前回の記事では、誹謗中傷に対する対策は、「削除要求」「損害賠償請求」「刑事告訴」の3つの方法が有効だと説明しました。今回は、「犯人を特定する」ための心強い法律がありますので、こちらをご紹介したいと思います。
その法律の名前は、「プロバイダ責任制限法」です。(今回の誹謗中傷対策シリーズでは何度も出てきている法律ですね。)
-
追記2010年9月24日
<法律の趣旨>
特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものとする。
つまり、この法律の趣旨は、①損害賠償責任の制限、②発信者情報の開示の2点を規定しています。プロバイダ等に対して、権利侵害情報が書き込まれた場合に、自主的に対応してほしい、そして、その実効性を高めるために法が後方支援するという趣旨だと理解しています。
‐
プロバイダ責任制限法のような法律が後方支援をしなければならない理由
①情報の違法性の判断が困難であったりするためにプロバイダ等が自主対応による措置の責任が不明確な場合があるから。
②民事事件ではほとんど発信者情報の開示はされず、被害者救済が困難なことがあるから。
→但し、法律は後方支援を行う土壌を作っているので、削除や情報開示命令などを出してもらうために裁判を起こす必要はあるだろう。(自主的な対応が望まれるが、自主的な対応がもしもまずかった場合にプロバイダ等が責任を取るリスクを回避するために、わざと負けたいと考えているものと思われます。そのため、形式上、削除依頼者や情報開示依頼者は、裁判を起こして判決または命令を勝ち取る必要があります)
‐
<法律の対象(定義)>
特定電気通信とは
不特定の者によって受信されることを目的とする電気通信の送信(公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信を除く。)
インターネットでのウェブページや電子掲示板などの不特定の者により受信される者が対象。
放送に当たるものは、ホウ素応報等での規律があるため、対象外となる。
‐
特定電気通信役務提供者とは
特定電気通信設備(特定電気通信の用に供される電気通信設備)を用いて他人の通信を媒介し、その他特定電気通信設備を他人の通信の用に供する者
プロバイダ、サーバの管理・運営者が対象
特別に「営利の者」に限定しているわけではないので電気通信事業者以外の者も対象となる。
‐
<発信者情報開示の要件>
①請求をする者(被害者、権利侵害されたとする者)の権利が侵害されたことが明らかであること。
②損害賠償請求権の行使のために必要である場合その他開示を受けるべき正当な理由があること。
※特定電気通信役務提供者(プロバイダ等)が、開示に応じないことによる損害は故意または重過失がなければ免責ということが規定されているので、「とりあえず」裁判所に開示請求の訴えをした方がいいと思います。前記しましたが、もしも間違いだった時のリスクをプロバイダ等は感じていますので、裁判所の開示請求の命令があれば名実ともに堂々と開示できますので。
‐
「プロバイダ責任制限法」という法律の「趣旨」と法律内に使われている「用語の説明」と「情報開示の要件」を説明させていただきましたが、この法律を使いこなしてしっかりと効果を出すのはなかなか大変そうですね。王道的解決法では「犯人の特定」が重要ですので、是非とも知っておきたい法律です。興味のある方は、もう少しインターネットで調べるか、法律有資格者へお問い合わせいただくか、私と議論できたらいいのかなと思っています。
‐
この記事を書きながら、権利侵害別にプロバイダ等の対応について、もう少し検討したほうがいいかなと思っています。名誉毀損の場合、著作権違反の場合、プライバシーの問題の場合など。奥が深い。
誹謗中傷対策と法~法的解決法の方法論と限界②~
- 2010-09-17 (金)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
前回の記事で、代表的な法的解決法(王道)について、大まかな流れを記載しましたが、「犯人がわかっているかどうか」がポイントでした。「犯人がわからない」という方は、是非、「インターネット上の解決法」をご検討ください。
今回は、「犯人が分かっている」場合の対応法として挙げられる3点「削除要求」「損害賠償請求」「刑事告訴」を私の経験を交えてお話させていただきます。
‐
「削除要求」について
①本人への削除要求
そもそも稀かもしれませんが、書き込みを行った者が分かっている場合は、「内容証明郵便」などで、削除通知を行います。法的解決法といいますが、書き込み被害に遭った本人が通知を行うことも可能です。但し、弁護士名義での内容証明郵便は、本人以上の効果を生む可能性が高いですので、少々費用がかかってしまうかもしれませんが、弁護士名義での内容証明郵便が良いでしょう。但し、内容証明郵便には、法的拘束力がありませんので、消すか消さないかは、本人次第です。(気持ち的な圧力はかけられますが、それ以上でもそれ以下でもないですね…そんな感じが内容証明郵便です)
本人が自発的に消すことは皆無だと思われますし、本人が消したくても二度と消せないサイトというものもありますので、本人への削除要求は成就しないと思われます。
‐
②サイト運営者への削除要求
本人への削除要求と同様に、削除しなければならない動機付けがないと自発的な削除がなされることはないと思われます。
私の経験上、誹謗中傷が書き込まれて困っている方に協力して頂いて、サイト運営者へ削除要求をしていただきましたが、なかなか難しかったことを覚えています。成功した事例としては、「削除しなければならない動機付け」をサイト運営者に感じさせることが大切です。
・「書き込まれた本人であること」を伝える。
・被害内容を分かりやすく伝える。
・書き込まれた内容が事実でないことを伝える。
・書き込まれた内容が「損害」「被害」が発生していることを伝える。
・サイト運営者の「規約に違反」していることを伝える。
・協力を請う。(どんなに怒っていても高圧的な対応は控える。)
※これらは、某大手ポータルサイトのソーシャルメディア担当の方にお伺いしたお話ですので、かなり信ぴょう性は高いと思いますと同時に、けっこう当たり前のことですね。
但し、何度も言いますが、サイト運営者は必ずしも協力しなければならないということはありません。また、サイト運営者が自発的に消せない理由の一つとしては、この書き込み自体が「著作物」に当たる場合があるのです。著作物を勝手に消せば、著作者の権利を侵害することになります。憲法上の「表現の自由」を侵害することにもなりかねません。サイト運営者がここまで法律や憲法の精神を考えているかはわかりませんが、自分が提供するプラットフォームに絶対の自信を持っており、誰に対しても公平なサイト運営を行うという信念などを持っている方もいらっしゃるかもしれませんし。とにかく、サイト運営者の協力を請うことは一つの方法だとは思いますが、なかなか協力を得るのは難しそうです。私の成功事例はある意味奇跡だったのかもしれません。掲示板サイトの規模も小さく、対応してくれた方が良心的だったという諸要因が重なったのかもしれませんね。大きいところは失敗しています…
‐
‐
「損害賠償請求」について
①民事訴訟
・訴訟の長期化(解決まで時間がかかる)
訴訟は、通常、弁論期日というものがあり、これは月1度ほど行われます。原告(訴えた方)から被告(訴えられた方)に書面を提出する。この1動作に約1ヶ月間かかります。被告から原告に対して反論する際にも1動作となりますのでこれも約1ヶ月間かかります。裁判所の規模にもよりますが、上記の原告から被告へ、被告から原告への書面やり取りが続きます。お互い6回のやり取りをしたらそれで1年というのは平気で経過してしまいます。日本は3審制を導入していますので第一審で勝訴したとしても控訴、上告される可能性がありますね。この点からの訴訟が長期化し、費用対効果(弁護士への依頼は初期着手金だけかもしれませんが、精神的にやきもきしている時間や弁護士との打ち合わせなどを考えて。お金だけが費用ではありませんので。)が取れないと考えます。
・勝訴したとしてもコストを十分回収することの困難さ(費用回収が難しい)
書きこみ相手が企業ではなく、個人であることが多いでしょう。その個人から企業が受けた損害を全て賠償してもらうことは難しいです。そもそも無資力の相手からは損害賠償費用を回収できません。勝訴して、損害賠償費用が確定すれば、訴訟代理人の弁護士に対しては、訴訟費用を支払わなければなりません。
‐
「犯人からお金を回収することができなかったら弁護士にもお金を支払う必要がない」と思っている方も多いですが、これは大間違いです。だいたい委任契約書の中に、「裁判で認められた経済的利益のうち●●%」と記載されているでしょう。お金が回収できたかどうかは全く関係ありませんので、この点は十分に考慮する必要があります。
‐
‐
「刑事告訴」について
サイバー犯罪を専門に扱う部署があるようですが、名誉棄損事件は、サイバー犯罪とはなかなかいえないと思われます。そのため、十分な対応は期待できません。私自身、刑事告訴という事例は経験したことはありませんが、一番、効果が薄そうな印象を受けています。実損害が甚だしく、犯罪性が高い場合には検討の余地があるでしょう。
‐
‐
以上の通り、犯人が特定できている場合の3つの対処法の懸念点を挙げてみましたが、なかなか難しいのが実際のところでしょう。インターネット上の対策のいいところは、比較的費用が安く、早く、効果の高いところだと思いますので、上記の懸念点がつぶしきれない場合には一度ご相談ください。
-
2010年9月18日追記
立ち上げたばかりのサイトですが、読んで頂いてありがとうございます!
アクセス解析によると、誰かが見てくださったようです。
誹謗中傷対策と法~法的解決法の方法論と限界①~
- 2010-09-15 (水)
- インターネットと名誉毀損(誹謗中傷)
さて、本日は、「法的解決法の方法論と限界」について書きたいと思います。
今も変わらず、インターネット上の誹謗中傷対策の王道は、弁護士等の法律有資格者に委任契約をすることで、法的対策をしてもらう方法です。
「誹謗中傷なんて書く奴は訴えてやる!!裁判じゃ!」
と、騒ぎ立てる前にちょっと待って。お気持ちは重々ご察し致します。
ですが、法的解決法は、一般的に、「費用」と「時間」が思ったよりも必要になります。
また、「費用」と「時間」を費やしたにもかかわらず、思った成果(不届き者から損害賠償をいただく、権利侵害記事を削除させる等)が出なかったり、そもそも法的解決法を実行することができなかったりと法的解決法には限界があることを知って頂きたいと思います。
まずは、法的解決法を考慮されるのは王道ですから、もちろんよいと思います。
その際に、リスクヘッジとして、弊社が推奨する「インターネット上の解決法」を一つの選択肢にしていただけると幸いです。また、法的解決法をご希望の方には弊社のアドバイザリー弁護士もおりますので、ご紹介差し上げることも可能ですので、お気軽にご連絡ください。
(※弁護士法がありますので、弊社は中間マージンや紹介料などを頂くことはございません。弁護士紹介料などの名目で何かの費用が発生する業者がおりましたら、弁護士法に抵触している虞がありますので一度、ご確認と共にご注意いただけることをお勧めいたします)
‐
<法的解決法(王道)の例>
①弁護士等の法律資格者に相談。
→相談料が必要です。多くの弁護士事務所はタイムチャージ制を採用しています。1度目は無料というところや企業の相談と個人の相談でお見積りが違う場合もありますので、まずはお問い合わせをしてみてください。インターネット上の誹謗中傷・名誉毀損の場合には、インターネットに明るい弁護士さんが宜しいかと思います。
②代表的な質問1「犯人が分かっているか?」
→「はい」 (第一歩を踏み出そう!)
犯人が分かっていて、客観的に明白な場合には、「削除要求・損害賠償請求・刑事告訴等」の対応が考えられます。(⑤の法的解決法が可能そうです)
→「はい」 (犯人も認めているぞ。いいぞ、いいぞ)
犯人と思われる者が、「自分がやった」と認めれば、「削除要求・損害賠償請求・刑事告訴等」の対応が考えられます。(⑤の法的解決法が可能そうです)
→「はい」 (しぶとい奴だ。お前がやったに違いない。「疑うのはよくないですよ。まだまだ焦らない」)
犯人と思われる者が、「自分がやった」と認めていなく、客観的な証拠がない場合には、「いいえ」と同じ手順を進みます。
↓「いいえ」
③代表的な質問2「まともな(プロバイダの)サイトか?」
→「はい」 (「まともな」というところがポイント。ちゃんと対応してくれるかの見極め)
プロバイダ責任制限法で対応する。ただし、発信者情報開示のためには通常は訴訟になる。発信者を突き止めるために訴訟が2回以上必要な場合もある。(⑤の法的解決法が可能そうです)
↓「いいえ」 (あちゃー、怪しいサイトだ。まだまだ焦らない)
④代表的な質問3「現実に大きな損害が発生しているか?」
→「はい」 (損害額算定など、実損害というのはもう一つのポイントです)
警察に被害届を提出して刑事告訴する。犯人に心当たりがある場合には警察も動きやすいと思います。
↓「いいえ」 (どうしても消したいなら、「インターネット的解決法」逆SEOなど)
法的解決法による対応が難しいと思われます…(別の対策法を探すことになります)
⑤事件化により委任契約。
→名誉毀損の内容を弁護士の先生に相談し、その弁護士の先生にご依頼する場合には、委任契約という契約を結びます。名誉毀損案件について、弁護士の先生に代理権を授与して、対応してもらうことになります。
参考文献:『広報会議』(2009年8月号p42,43)
‐
犯人がわかっているかどうかがスタートですね。犯人がわかっていないことが多いというのが、インターネット上の誹謗中傷のやっかいなところです。匿名性ゆえ、対応する側の苦労がにじみ出ています。
犯人がわかっていたとしても、幾つかの関門があることが上記からおわかりかと思いますが大変なのです。
次回、「削除要求」「損害賠償請求」「刑事告訴」「プロバイダ制限責任法」「2ちゃんねるでの名誉毀損」は実際のところどうなのかというところを私の経験を基に書きたいと思います。
-
2010年9月15日追記
「犯人がわかっている」ことは、けっこうあるようですね。個別で和解契約を結んでいる事例もあるようですが、削除するかしないかはやはり書き込んだ本人の都合になるので、強制履行などはなかなか難しそうです。もしもブログサイトなどの場合には、IDとPASSを教えてもらって、ご自身で削除するなども一つの手かもしれませんね。もちろん、削除に応じていることが大前提です。勝手に消して、著作権法違反だ何だって言われても困りますから。(誰も言わないですかね!?)
ホーム > インターネットと名誉毀損(誹謗中傷) のアーカイブ







長澤 斉(Hitoshi Nagasawa)
